工事の最盛期は1日400人体制を想定
『TEAM MIKAWA』でアリーナ建設に挑む
使う人、建てる人、近くに暮らす人...。アリーナ建設プロジェクトに関わる「みんな」に、新アリーナの夢や希望を聞くスペシャルインタビュー。今回は、新アリーナの工事現場で現場責任者を務める株式会社竹中工務店の中村 壽さんを取材。大規模プロジェクトを成功させるために、大勢のスタッフをひとつにまとめる中村さん。その素顔に迫ります!

建設業界の課題や新アリーナの施工の現状まで中村さんに詳しく話してもらいました!
「コストコントロールを徹底し、建設事業主の要望に最大限応えていく」
――現在のお仕事について教えてください
竹中工務店は新アリーナの施工を担当しており、私は現場責任者として全体管理を任されています。こうした大規模プロジェクトは、当社の社員に加えて協力会社や外部の職人さんも参加し、大勢のスタッフが協力して進めていきます。現在(2026年2月下旬時点)は、1日あたり100人ほどのスタッフが動いています。竹中工務店は数多くの大規模プロジェクトを手掛けてきたノウハウがありますし、「この規模、この工程なら、これくらいの人数が必要」という蓄積されたデータに基づいて、最適なチームを編成しています。来年の今頃が工事のピークになると想定していて、その際にはおそらく1日400人ほどの体制になる見込みです。
――1日400人はすごいですね。入札から完成まで、全体の大まかな流れも教えてもらえますか?
新アリーナ構想自体は10年ほど前から耳にしていました。2023年末に正式な情報をいただき、竹中工務店は入札に参加。当社を施工会社に決定いただいたのが2024年7月末です。敷地内に建てられていた工場の解体工事が終了した後、2025年11月に起工式を行い、それから着工。今日から数えるとおよそ2年後、2028年3月に竣工予定で、そこで建設事業主(三河安城交流拠点建設募金団体)へ引き渡しとなります。
敷地面積は約30,000平方メートルと非常に広大で、現在は敷地のほぼ中央に立つメインアリーナの建設から進めています。その後にクラブハウスやサブアリーナの建設へ移る予定です。クラブハウスとサブアリーナに関しては、皆さんからの要望がいっぱいありまして、資材の高騰も重なり費用がどうなるか…頭を悩ませる部分ではあります(笑)。新アリーナは完成後、安城市に寄贈されます。公共施設としての日常的な賑わいを創出するため、敷地の南側にはイベントスペースや遊具の設置が計画されています。基本的な構想は決まっていますが、同時にさまざまな計画も動いていて、最終的にどうなっていくかは予算との兼ね合いですね。
――すべて決まってから動き出すのではなく、建てながら細部を詰めていくイメージでしょうか?
大規模プロジェクトでは、全体のデザインやコンセプトは決定していても、細部は進行に合わせて決めていく部分があります。例えば「この部分にどの素材を採用するか」といった具体的な選択です。当然、そこには予算が関係してくるため、私たちは「この素材だと費用はこれくらいになります」などと提案します。こうした「コストコントロール」も施工会社の重要な役割です。
建設事業主や設計会社の方々と打ち合わせを重ねて、決定事項を積み上げながら、並行して「設計図」から「施工図」を起こしていきます。設計図はデザイナーによる「デザインを設計した図面」で、私たちのような施工管理者はそれをもとに、工事をするための寸法や材料などを具体的に指示した施工図を描き上げます。この施工図があって初めて、実際の工事が進んでいきます。
――近年、建設費の高騰が話題となっています
おっしゃる通り、建設業界では人件費や材料費の高騰が続いています。特に人手不足は業界全体の深刻な課題です。いい人材を確保するため、業界団体を挙げて働き方改革を進めていますが、給与水準を維持しながら休日数を増やせば、人件費増や工期の長期化は避けられません。10年前と比べると、同規模の建物でもコストは1.5倍から1.6倍に膨らんでいると感じます。東海エリアはまだ落ち着いているほうで、東京都内はさらに高騰しているでしょう。こうした状況の中、予算内で最大限に応えていくのが、私たちプロの腕の見せ所です。

パースや施工図を交えながら紹介する中村さん。施工には竹中工務店の最新技術も詰め込まれている

事務所の前には大きく掲げられたフレーズが。これがチームを一つにする
「スローガンを掲げてチームをひとつに。現場に欠かせない一体感」
――施工会社の視点から見た、このアリーナの特徴を教えてください
設計を担当されている日建設計さんは国内トップクラスの建築設計事務所です。デザインや機能へのこだわりが強く、私たち施工側に求める要求水準も高い。アリーナやスタジアム、ドームのような建物を我々は「大空間」と呼びますが、こうした構造物特有の施工技術的な難しさもあります。さらに、公共施設としての堅牢性も求められます。
それに応えていくのが私たちの役目。一般的なビルや工場に比べると、こうした大空間の建設に携われる機会はそう多くありません。スタッフのモチベーションも高く、困難も楽しみながら取り組んでいます。
このアリーナの特徴は、格子状のフレームが露出したデザインと、「マルチユニット」と呼ばれる箱のような空間を建設後に増やしたり減らしたりできるフレキシブルな構造です。パース(完成予想図)をご覧いただくとイメージしやすいと思います。私の知る限り、国内でこうしたフレキシブルな構造の建造物は記憶にないですね。
――現場には大きなスローガンが掲げられていました。事務所内にもシーホース三河のグッズをちらほらと見かけます
スローガンは会社の方針ではなく、プロジェクトに参加しているメンバーからアイデアを募り、みんなで話し合って決めたフレーズです。ちなみに、フレーズの発案者は私になるんですが(笑)、『JIDAIをかたちに みんなのアリーナ』です。毎日この前で朝礼を行っています。『TEAM MIKAWA』のロゴを入れたオリジナルのポロシャツやスウェットも制作しました。こういうものがあるとね、やっぱりチームがひとつになるんですよ。建設は人が動かないと始まらない仕事です。全員が一体感を持って取り組まなければ、素晴らしい建物は完成しませんから。
――最後に、新アリーナはどんな場所になってほしいですか?
関わってきたどの建物もそうですが、やはり「にぎわい続ける場所」になってほしいですね。敷地内に仮設事務所を建て、大勢の仲間と一緒に数年間ここで仕事をするわけです。我々は民間企業ですから、プロジェクトが終わればまた次のプロジェクトへ…となりますが、やっぱり思い入れが生まれます。当然、仕事を通してシーホース三河に興味を持ったスタッフも増えました。言ってみれば、新アリーナは自分たちにとって「子ども」のようなもの。意外に思われるかもしれませんが、引き渡し日は達成感と共に、寂しさもあるんです。保険の契約上、引き渡し日の決められた時刻までは自由に出入りできますが、その時間を過ぎて保険が切れた瞬間、私たちは外部の人間になってしまう。自分たちの手から離れていく、そんな寂しさもあるんですよ。
建物が簡単に完成しないことは、身をもって知っています。だからこそ、地域の方々に長く愛されるアリーナとしてにぎわい続けてほしい。そして完成した暁には…実は最近、娘がバスケを始めたんですよ。いつか娘と一緒に、ここでバスケ観戦を楽しみたいですね。

株式会社竹中工務店 名古屋支店 作業所長
中村 壽(なかむら たもつ)
PROFILE
九州大学工学部を卒業後、2001年に株式会社竹中工務店に入社。大阪本店を経て、2003年より名古屋支店に勤務。ささしまライブ駅直結の高層タワー「グローバルゲート」の新築工事や、2025年にオープンしたラグジュアリーホテル「エスパシオ ナゴヤキャッスル」の新築工事などを担当してきた。休日はNetflixのドラマを観てリフレッシュするのが楽しみ。